本記事では、三井住友FGとSBIのスマホ金融などを中心とした幅広い分野での提携について、その戦略的な意味合いや将来展望を分かり易く解説する。

三井住友FGとSBIホールディングスの提携強化については、スマホ向け金融サービスにおける相互商品供給」「対面販売での協業・人材交流」「スタートアップ(フィンテック企業)投資ファンドへの共同出資」が主要なポイントだ。

双方の戦略的な方向性に合致した、ケイパビリティ・経営資源を補完する意義ある提携と言える。

今後、斯様な提携による経営資源の補完は、大手金融機関を取り巻く環境や、閉塞感がある国内市場での顧客開拓の動きの延長として、増加していく蓋然性が高い。その結果として、伝統型金融機関、テクノロジー系金融機関の競争に優劣が生まれる可能性もあるので、今後も動向を注視したい。

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以下で、 元銀行員としての知見や外資系戦略コンサルティングファームにて銀行の多彩なプロジェクトに従事し、銀行の経営に係わる中で養った独自の視点で、詳細に解説する

三井住友FGとSBI提携の概要及び戦略的な意味合い

三井住友フィナンシャルグループ(FG)とSBIホールディングス(HD)はスマートフォン向け金融サービスなどデジタル分野を軸に包括提携する。

三井住友がSBI傘下のスマホ専業証券に出資するほか、SBIが設けるデジタル分野の企業に投資する1000億円規模の新ファンドにも出資する。

異業種からの金融業参入が相次ぐなか、メガバンクとネット証券最大手が組んで対抗軸をつくる。

日本経済新聞

メガバンクの一角で今や利益額において三菱UFJ FGと双璧を成す三井住友FGと、ネット証券最大手SBIホールディングスが提携関係を強める。ポイントとしては以下の3つだ。双方の戦略的な方向性に合致した、ケイパビリティ・経営資源を補完する意義ある提携と言える。

提携のポイント
  • スマホ向け金融サービスにおける相互商品供給
  • 対面販売での協業・人材交流
  • スタートアップ(フィンテック企業)投資ファンドへの共同出資

三井住友FGとSBI提携強化の戦略的意味合い①:スマホ向け金融サービスにおける相互商品供給

投資信託や保険といったリテール向けの商品領域で、相互に商品供給する。これにより商品ラインナップを拡充する狙いがある。

伝統的な証券会社として富裕層・ミドル・シニア層への商品に厚みを持つSMBC日興証券と、ネット証券として若年層向けのライトなデジタル向け商品が多いSBI証券のラインナップは確かに補完関係にあり意義があると考えられる。

三井住友FG、SBIホールディングス双方共に、顧客開拓の余地があるセグメントに対して売り込む「武器」としての商品ラインナップを手にすることになる。

三井住友FGとSBI提携強化の戦略的意味合い②:対面販売での協業・人材交流

対面販売でも連携する。資産運用の相談窓口を全国展開するSBIマネープラザとSMBC日興証券で人材交流や運用商品の相互利用を進める。同証券はSBIマネープラザへの出資も視野に入れる。

日本経済新聞

対面販売での協業・人材交流により、対面販売に強いSMBC日興証券のノウハウをSBIホールディングスが吸収する、という目的と想定される。自社の経営資源を強化したいSBIホールディングスが盛り込みたかった提携内容である可能性が大きい。

伝統型の証券会社として対面販売に強いSMBC日興証券のセールスノウハウは、SBIホールディングスにとっては獲得したいケイパビリティだろう。リアルチャネルであるSBIマネープラザでの飛躍は、SBIホールディングスの今後の成長に向けた重要なファクター。

人材交流による販売能力の強化が、SBIホールディングスのリアルチャネル基盤を強化させる可能性が有る。

三井住友FGとSBI提携強化の戦略的意味合い③:スタートアップ(フィンテック企業)投資ファンドへの共同出資

三井住友FGとしては、SBIのデューデリジェンス能力をレバレッジしながら投資利益の獲得とフィンテック企業のデジタル・テクノロジーを取り込みたい、という意図が透けて見える。

フィンテック企業は三井住友FGのような伝統型の金融コングロマリットにとっては脅威かつ裏返しとして機会そのものであり、将来的な成長による投資利益を見越して種を撒きたい趣旨だろう。加えて自グループで展開可能な、先端的なデジタル・テクノロジーを獲得したいはずだ。

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一方で、比較的デジタル領域に明るいSBIホールディングスの側からすると、投資資金の拡大が狙いと考えられる。三井住友FGの強大な資金力をバックに、より広範な領域で、有望なフィンテック企業に投資することが可能になる。

三井住友FGとSBIの提携強化から見える将来展望

三井住友FGとSBIホールディングスのスマホ金融サービスにおける提携は、センセーショナルではあるが突飛なニュースではない。メガバンクのような伝統的な金融機関が感じ続けている危機感、SBIホールディングスの競争環境を考慮すれば、むしろ必然とも言える動きだ。

両社が提携に至った背景を紐解くと、今後の金融業界における将来展望が見えてくる。

三井住友FGとSBIの提携強化から見える将来展望
  • 伝統型金融機関とテクノロジー系金融機関の提携によるケイパビリティ・経営資源の相互補完が更に進展する
  • 大手金融機関によるデジタル・テクノロジー(≒フィンテック企業)の取り込みが更に拡大する

伝統型金融機関とテクノロジー系金融機関の提携によるケイパビリティ・経営資源の補完が更に進展する

伝統的な金融機関である三井住友FGとネット証券大手であるSBIホールディングスの提携は、前述の通り顧客・チャネル軸でのマーケット占有領域の違いから、保有するケイパビリティ・経営資源が異なる。

証券業務で言えば、三井住友FGは傘下のSMBC日興証券はミドル・シニア層に対するリアルチャネルでの販売力に優れるのに対し、SBIホールディングスは、デジタルとの親和性が比較的高い若年層を中心とした顧客基盤であり、商品もオンラインチャネルで販売できるシンプルな商品が多い。

こうした伝統型金融機関とテクノロジー系金融機関のマッチングは、これまで開拓が不十分だった顧客へのリーチを獲得するためのケイパビリティ・経営資源を獲得する上で有意である。

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少子高齢化によって市場成長が鈍化し先細りが目に見えている国内市場において、現状取り込めていない顧客層を開拓していく上で、双方にメリットがある提携であり、今後も斯かる動きは増加していく可能性が高い。

大手金融機関によるデジタル・テクノロジー(≒フィンテック企業)の取り込みが更に拡大する

三井住友FGのような大手金融機関にとって、デジタル・テクノロジーを駆使した顧客サービスを展開するフィンテック企業は脅威に他ならない。金融商品に繋がる重要な顧客接点をフィンテック企業に奪われてしまうからだ。

脅威を機会に変えるべく、あらゆる大手金融機関はデジタル・テクノロジーの、つまりはフィンテック企業の取り込みに躍起になっている。買収・出資・提携といった「飛び道具」を利活用するケースは、今後も確実に増加する。

まとめ

三井住友FGとSBIホールディングスの提携強化のポイント、及び今後の金融業界における将来展望について解説した。「スマホ向け金融サービスにおける相互商品供給」「対面販売での協業・人材交流」「スタートアップ(フィンテック企業)投資ファンドへの共同出資」が主要なポイントだ。

今後、斯様な提携による経営資源の補完は、大手金融機関を取り巻く環境や、閉塞感がある国内市場での顧客開拓の動きの延長として、増加していく蓋然性が高い。その結果として、伝統型金融機関、テクノロジー系金融機関の競争に優劣が生まれる可能性もあるので、今後も動向を注視したい。

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